朔は新月、望は満月を意味します。
不定時法を表示する和時計を作ってきた私は、かねてより月齢表示機構のついた時計を作りたいと思っていました。
不定時法を使っていた旧暦(太陰太陽暦)では朔(新月)を1日として望(満月)を15日としていました。平均朔望月の周期は29.530589日ですので一ヶ月の長さは29日か30日とし、季節とのズレは潤月を(約19年で7回)入れる事で補正されていました。
照明器具が当たり前でない時代において、月明かりは夜間の照明として重要なものでした。太陰暦では15日付近が満月になるので夜間の行事のスケジュールを立てるのに便利であったと思われます。また、月齢と潮の満ち引きは密接な関係があるため、漁業従事者にとっては月齢と日にちが一致している太陰暦が便利ですし、カレンダーがなくとも月の形を見れば今日が何日か見当がつくこともメリットだと思います。一方、農業従事者には季節と月のズレは不便なので、1太陽年を24に分けた二十四節気という暦を参考にしていました。
太陽と月の運行に基づいた不定時法と太陰太陽暦は、農業や漁業という当時の日本の基幹産業にとって非常に理にかなった暦でした。
「朔望」を腕にのせ、かつての日本に思いを馳せ、月夜を楽しんで頂ければと思います。
スペック:
朔望
ケース径 - 38mm
ケース素材 -
黒四分一、18Kホワイトゴールド
※黒四分一とは色金と呼ばれる日本独自の合金で銅87.3%、銀9.9%、金2.8%の比率になっている。煮色着色という技法で黒色に着色する。
防水性 - 3気圧防水
ムーブメント - cal. mk17
振動数 - 28,800
石数 - 22
手巻き
高精度ムーンフェイズ(122年で1日分の誤差)
年産4本
5,000,000円
(税抜).
朔望月の平均的な周期は29.530589日です。
一般的なムーンフェイズは、59枚の歯車を使用して歯車が一周で2朔望月を表示しています。
59/2=29.5日となり、朔望月毎に0.030589日(約44分)のズレが生じます。
この時計では、複数の歯車を組み合わせる事で、29.53125日の周期で月齢を表示しています。
朔望月毎の誤差は僅か0.000661日(約57秒)となります。誤差が累積し1日分のズレが生じるのは122年後のことです。
ムーンディスクは、銀の板に黒四分一を丸く切り抜いた物を象嵌して作られています。
蔦の装飾は、糸鋸を使って手作業で切り抜いています。
ゼンマイなどの一部の部品を除き、ケース、ムーブメント、文字盤、針にいたるまで、菊野自らの手で制作しております。
12時位置にスモールセコンドをつけたり、文字盤の透かしのデザインの変更も可能です。